先月の朝日新聞夕刊・・・姜さんの記事の補足

議会終了後は、情報公開の審査請求の弁明に対する意見書提出、庁舎裁判の反論に対する再反論、下日出谷区画整理の審査請求への再反論など、文書作成に終われ、合間に、家の雑事と、相変らずの忙しさにストレスがまたまた溜まってきています。
先月9月議会の最終日、9月19日のことです。本会議中に携帯に、何度もマナーモードで鳴ります。休憩中に、何事だ、と留守電を聞くと、朝日新聞の夕刊に写真入りで私が載っていると。1ヶ月ほど前に受けた取材を忘れていたのですが、その日の夕刊一面だというのです。議会事務局には夕刊はなし。東京の知人からは、「素晴らしい。」「良かった。」等々・・・。ところが議会終了が午後7時半過ぎ。その後予定が入っていたので、新聞を目にしたのは午後11時過ぎのことでした。
どきどきしてポストから新聞を取り出すと、内容は、何のことはない、姜尚中東大教授の友人として紹介されているだけのことなのです。知り合いというのは、オーバーなものだということをその時、学びました。とは言うものの、私がインタビューで一番言いたかったことが書いていなかったので、この際、ほとぼりも冷めたところで付け足すことにします。
 20081013001826646  (朝日新聞記事)
 
日本人はわれわれを良心の鏡として利用する
1980年代後半のことです。当時、私達は「桶川市民ひろば」というグループを、作っていました。平和、核、環境問題と共に,地域の文化も創っていこうと、心通う友人と一緒に立ち上げたばかり。その仲間は、いまだに私の最も信頼する人たちで、何があってもお互いの生き方を尊重している心の友でもあるのです。私はその仲間から、在日の人たちの指紋押捺問題や、過去の戦争責任、戦前から戦後の現在まで被っている差別や人権侵害について、少しずつ学んでいきました。そして姜さんと出会い、彼が桶川市に転居してきたことで、桶川市との指紋押捺問題に取り組んだのです。
姜さん夫婦と私は同い年ということもあって、他市に転居してからも、家族ぐるみのお付き合いをさせていただきました。彼の物静かな話ぶりと鋭い切り口。その見識の深さは、当時からずば抜けていたので、私は、喰い入るように彼の話を吸収しました。
その中でも、忘れられないことがあります。あるシンポジウムを企画しようということになり、姜さんに話をしてもらいたいとお願いしました。私が彼から学んだことをもっと多くの人に知って欲しい、との思いからです。しかし、いつもは気軽に引き受けてくれる彼が、「日本人は時として、われわれを良心の鏡として利用する」と、拒絶の言葉を発したのです。
私たちにとっては、姜さんは、社会科学、政治学、国際政治に精通し、常に私たちに見えない部分を気付かせてくれる先生でもあり、未知の領域をたくさん持っている存在でした。そして、彼が生きてきた苦悩と現実から発する言葉は、常に私たちの心を揺さぶりました。それだけではない、常に自らの生き方を問い続けているのです。
しかし、彼が話をすることは、同時に自らの傷を疼かせることでもあるのです。そのことに思いをめぐらすことも無く、私達は、加害者としての日本人がどう生きるべきなのか、共に考えたい、という気持ちばかり。更には、少しでも多くの人に在日の現状を知ってもらいたい、という思いに走っていたのです。
あの言葉は、今でも私の心に鋭く突き刺さっています。無知と無神経さと力の無さが、大切な友人さえ傷つけ、利用していたという指摘に、愕然としました。戦争中は皇国臣民、日本人として戦わせ、戦後は外国人として、何の補償もされていない。そのひとつでさえ、未だ私達は解決をしていない。多分在日の人たちにしてみれば、あんた達が悪いのに、なぜ自分達が語らなければならないのだ、傷つかねばならないのだ、と。
これは、薬害患者も、被爆者も、あらゆる被害者に共通の叫びです。勿論、姜さんは、それすら乗り越え、右翼の攻撃をものともせず、身を呈してメッセージを発信し続けているのですが。

手段を選ばない方法は、目的を変えてしまう

以後、私は誰かに何かをお願いするときは、必ず「人を利用していないか」自問自答することにしています。目的のために手段を選ばずに進めたら、必ず目的は変わってしまう、にもかかわらず歪んだ目的を正当化してしまうからです。政治に携わる私達は、特に肝に銘じなければなりません。
在日の人たちと私たちの間には、残念なことに溝があります。被害者と加害者という。だからこそ、ひとつひとつ埋めていかなければ。そして、ずっと学び続けなければならないのだと思っています、よりグローバルで、冷静に社会を見つめる彼らの視点に。姜さんの言った、日本人の良心を映す鏡として。
姜さんとはしばらく話をしていません、お互いに忙しいのをよく知っているから、新聞記事の話もしていません。それでもどんな時にあっても、どんな場所にいても、心の底から信頼している大切な仲間です。
素晴らしい友人達に改めて、感謝! (何だか、つまらない話になりました。)

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